構造化プロジェクトマネジメント(SPM)

SPMとは

icon_bl_04.png構造化プロジェクトマネジメント(Structured Project Management、略してSPM)はアイルランドにあるプロジェクトマネジメントコンサルティング会社、ETPの創立者であるFergus O'Connelllさんによって考案されたプロジェクトマネジメント手法です。この手法はFergusさんをはじめ、同社のインストラクターによって3日間のワークショップを通じて世界中の様々な企業が実践しています。日本ではコラボプロジェクト・サービスがワークショップの販売代理店として、日本語によるSPMワークショップを開発しました。

構造化プロジェクトマネジメント、プロジェクトを成功させるのに必要なことを難しい理論や決まり抜きに実践するためのコツをプロジェクトの流れに沿った形のリストとして整理したものです。ユニークなのは、プロジェクトを成功させるには皆が知っているごくあたりまえの常識をきちんと活用しさえすればいいのだという、誰にでも受け入れやすい考え方、表現方法が基本になっている点です。成功させるためのリストは10項目に整理されており、10ステップと呼ばれます。

それぞれは以下に示すように常識的なことばかりですが、きちんと実行するのはとても難しいことです。たとえば、ステップ2でプロジェクト計画を作るという段階がありますが、SPMが考えるレベルの計画を作っている企業はほとんどないと言ってよいでしょう。極論すれば、計画がプロジェクトの実際の進展を正確に“予測”していれば、プロジェクトは成功するわけです。

どうしたら未来予測としてのプロジェクト計画を正しく作れるのか、という問いに答える数々の
ヒントを与え、それを自らのプロジェクトにあてはめて実習するというのがSPMワークショッ
プの中心となる部分です

SPMの10ステップ

成功したプロジェクト数千例からエッセンスを取り出してできあがった、いわば“プロジェクト
成功のための10のコツ”は次のとおり、むずかしいものではありません。

1. ゴールを可視化する(Visualize the goal)
2. ジョブのリストを作成する(Make a list of jobs)
3. リーダーを一人決定する(There must be one leader)
4. 人をジョブに割当てる(Assign people to jobs)
5. 計画に余裕と期待を組み込む(Margin for error/Manage expectations)
6. 適切なリーダーシップスタイルをとる(Use an appropriate leadership)
7. 状況を把握する(Know what’s going on)
8. 状況を伝える(Tell people what’s going on)
9. ステップ1-8をくり返す(Repeat steps 1-8)
10.成功の喜びを分かち合う(The prize)

SPMの本質

SPMの本質を知るにはやはり考案者であるFergusさんの話を聞くのが一番です。フランスに"友人”と住んでいる彼に会いに行くのも難しいので、彼の著作からエッセンスをご紹介しましょう。

SPMの10ステップは、人々が抱えるプロジェクトマネジメントの典型的問題を解決するものです。その問題とは、「達成できないものごとを約束してしまう」ことです。

人々がプロジェクトをリードする立場になる時、プロジェクトはミサイルのようにやってきます。弾道型はその姿がレーダーに捉えられます。上司に呼ばれて会議室に行ったら、XXX銀行担当の営業や部長もいて、資料の束を見せながら、「今度、この銀行の本支店ネットワークの増強プロジェクトにうちが入ることになってね、そのプロジェクトを君に・・・」という具合です。一方、巡航型あるいはスティルス型はレーダーに映りません。つまり、本人が気づかないのです。

エレベータに乗ろうとホールに行ったら、営業さん達とエレベータから出てきた上司とばったり遭遇。そこで上司が、「例の銀行の本支店ネットワーク設計だけど、設計と構築にどれくらいかかると思う?」

ミサイルには弾頭がついています。プロジェクトのそれには非常に危険な、バイナリ弾頭というものがついています。"バイナリ”つまり、2つのものが対になっています。それらは個別に存在しているときはまったく安全なのですが、2つが合わさるととてつもなく危険なものになります。その2つとは・・・

・担当することになるプロジェクト自身
・すでにある制約条件

さきほどの巡航ミサイルの例にも制約条件はあります(だから危険なのです)。先の例ではそれは、「期限」です。どれくらいかかるか聞かれたんだから、期限はこれから決める?そんなに甘くないですよ。期限が決まっているからこそ、上司は聞いたのです!制約条件には、期限の他にお金や人のこともあります。最低どれかひとつは必ずあります。こんな危険な弾頭を備えたミサイルを任されたあなたはどうしますか?

ここで、先に挙げたプロジェクトの典型的問題を思い出してください。

「達成できないものごとを約束してしまう」

バイナリ弾頭を抱えたままプロジェクトを進めますか?

SPMの10ステップでは計画段階に、この2つを分けて取り扱います。まず最初にステップ1から5aまでで、プロジェクト自身を扱い、その後ステップ5bで2つ目の要素、制約条件を処理します。こうすることで、危険な弾頭は安全に分解されていくのです。

PSI(成功確立指標, Probability of Success Indicators)

SPMの特長のひとつに、プロジェクトが成功できるかどうかを数値で示すことができるというものです。ステップそれぞれに点数をつけてその合計をとります。

ステップ1から8にはその実現度に応じて与えられる点数が決められており、合計で100点満点の指標となります。これをプロジェクト成功確率指標(PSI, Probability of Success Indicator)と呼びます。プロジェクトの立ち上げから実行・コントロールの段階で常にこの指標をバロメータとして使用し、得点の低い部分を重点的に改善することでプロジェクトを成功させるという流れになります。

PSIの配点は、ステップ1と2がそれぞれ20点、ステップ3以降は10点です。合計で100点となりますが、計画段階だけで言うとステップ5までなので70点となります。つまり、7:3の割合で計画に重きをおいていることになります。

PSIの採点方法はそれほど厳格なものではありません。各ステップに対して複数の設問が用意されており、それらに答えることで点数をつけることができます。このサイト上にPSIを採点するための設問フォームが用意されています。ぜひお試しください。→ PSI採点フォームへ