プロジェクト計画を精密につくるIEO法

IEO法は、プロジェクト計画を作るツールです。やるべき作業をボックスで表現しながらつなげていく書き方で、なにを何のために、どういったリソースを使いながら実行するのか、それはどれくらい時間がかかるのか、といったことを図で表現し、できあがった図でプロジェクトの実施管理も行おうという考え方です。

IEO法の基本

IEOsimple2.png IEOの基本要素は、下の図にある四角です。この四角がひとつのタスクを表わします。タスクは何らかの入力(INPUT)を受けて始まり、出力(OUTPUT)を出して終わります。この間に行われることは、入力された情報から出力情報への変換操作と定義します。ここでのポイントは、変換です。プロジェクト全体として到達したい目的とする状態に達するために必要な何かを変換操作によって作り出します。出力がなされることでプロジェクトのゴールに一歩近づくわけです。

IEOsimgle2.png

 変換操作を行なうにはエネルギーが要ります。タスクの実施に必要なのは、まず第一に人の努力ですが、気合があればよいというわけではありませんので、知識や情報、要求事項、決定事項、標準、規則、さらには幅広く環境という要素も含まれます。

 タスクは変換操作が完了し、出力が作り出された時点で終わります。タスクの実施中に作り出された他のもの、副次的要素は、他のタスクで使われるエネルギーとして認識されます。

 シンプルな構造をもつIEO法の目的は、プロジェクト計画を精密につくることです。プロジェクトを事前に精密に計画するということは、それが事前にプロジェクトの成否を判断する唯一の手段であるという考えからきています。
(やってみなければわからないという考えで始めるプロジェクト、あるいは、そういう要素を数多く含んだプロジェクトでは、精密な計画は不要あるいは作成不能です。その場合、事前にプロジェクトの成否を推し量ることはできず、その場合のプロジェクトマネジメントは、プロジェクト開始後に起きるさまざまなことに対応する対処療法となり、それに必要なスキルは別なものとなります。)

 プロジェクトは、一連のタスクで構成されますので、IEO法で記述したプロジェクト計画は、上図のような四角形がINPUT/OUTPUTでつながったものになります。

IEOdouble2.png

 四角形が右下の角で次の四角形につながっていく形でプロジェクトが進んでいくように表現されることが理解できると思います。複数タスクのつながりに関しては次のセクションでより詳しく考えていくことにし、ここではもう少し、タスクの入力と出力について考えてみます。

 入力と出力は、あるものの変換前と変換後の関係です。「3時のおやつ」プロジェクトでは、小麦粉と卵を入力として、ホットケーキという出力が得られます。熱というエネルギーで粉と卵がホットケーキというものに変換されるわけです。簡単そうに見えますが、入りと出という一般的な概念は、必ずしも変換操作の前後を意味しているわけではないので、タスクの入力と出力を考えると、変換前と後の関係になっていない入出力ペアを考えてしまうことがよくあります。

 別な例を上げましょう。ECサイト開設プロジェクトで考えてみるとどうなるでしょう。入力はなんでしょう。ECサイトを、販売商品が表示され、顧客がクリックひとつでそれを購入できるウェブサイトだと考えると、基本情報としての商品データを入力とし、顧客がウェブ上で購入手続きができるサイトが出力と考えることができます。商品データ(それは表形式やXMLで表現されているかもしれません)が、ウェブサイトに変換されると考えることができます。この変換作業がひとつのプロジェクトとなります。

PMBOKにおけるインプット/アウトプットとの比較

 PMBOKの中で解説されている各種のプロジェクトマネジメント・プロセスも、それぞれインプットとアウトプットが定められています。そして、ツールと技法はIEO法でのエネルギーに近い位置づけです。たとえば、WBS作成というプロセス(プロジェクト・スコープ・マネジメントの中の1プロセス)では、次のように整理されています。

IEOpmbok-wbs.png

これをIEO流に記述すると、少しちがったものになります。

IEOpmbok-wbs-ieo2.png

 入力であるスコープ記述書が変換され、スコープ記述書の更新版とWBSとが出力されることがよくわかるでしょう。入力が1つなのに変換結果が2つあるのは、入力を分離して2つにすることがタスクの目的でない限りあまり気持ちのよいものではないので、これは後で2つのタスクにするか、どちらかを出力エネルギーとしたいところです。
IEOで書くことの利点は、入出力とエネルギーが定まった時点では箱の中が真っ白なので、そこで何をやるのか考える動機づけになるということです。だれでもこれを見たら、「いったいここでは何をするんだ」と思うでしょう。さらには、できあがったWBSはどこで誰がどのように使うのかたどってみたくなるでしょう。