構造化プロジェクトマネジメント(SPM) ケーススタディ - Step 6 -

適切なリーダーシップスタイル(Step 6)

プロジェクトマネージャのリーダーシップに関して、SPMでは主に次の2点をチェックします。

予測どおりに事を運ぶことによる信頼を得、同時に不測事態に対してリーダーシップを発揮する
相手の特定や状況に対応してリーダーシップスタイルを変える

組織やチームを率いるリーダーの原動力は、信頼です。信頼されることによってメンバーがついています。逆に信頼がない場合、他の力を借りなければメンバーが動かなくなります。その信頼はどうやって獲得するか、それは先に挙げた最初の項目に答えがあります。まずは計画が正しく未来を予測していて、プロジェクトが動き出した時に計画した通りに事が運ぶことです。それによって、プロジェクトマネージャはプロジェクトをよく見通せていると皆が認識し、見通せている人の発言を受け入れるようになるのです。もっと簡単に言えば、言ったことを必ず実現することです。小さなことから少しずつ、ひとつも漏らさず実現していけば、プロジェクトはうまくスタートできるでしょう。

しかし、当然ながらすべてが予測どおりにいくことはありませんので、しばらくするとどこかで計画と違ったことが起きてきます。その時が信頼を得るための2点目を意識する時です。

予想外の出来事については、ステップ5で考えました。リスク対応計画もできています。それでも必ずメンバーが動揺するような出来事が起こります。ステップ5がしっかりできている場合に起こるサプライズとは、誰も考えなかったことです。しかも小さなことだったりします。たとえば、プロジェクトがかなり進んでから、「犬小屋の上に屋根がないので犬小屋に直接雨がかかってしまう。上に屋根を作ろう。」という話が出たりします。

こういった、そもそも計画にないことが出てくるのはプロジェクトでよくあることです。その時に、プロジェクトマネージャがどういう行動をとるかでメンバーの信頼感がさらに増すか、激減するか、大きく変わってきます。メンバーは恐らく皆、想定外のことについてどうしようかと議論を始めるでしょう、その時、プロジェクトマネージャはその一点に集中して考えるのではなく、少し広い視点で、プロジェクト全体をみながら対応計画を考えていきましょう。それにより、メンバーとプロジェクトマネージャとのうまい役割分担ができます。

リーダーシップと信頼についての話はここまでです。ステップ6のもうひとつの観点は、リーダーシップスタイルはどうあるべきかということです。

皆さんの職場のプロジェクトマネージャのことを考えてください。彼、彼女が職場を歩いている姿はよく見かけるでしょう。そして彼、彼女はどこへ行きましたか?誰と話を始めましたか?たぶん、関係する部長さんとか、設計リーダーとか、基幹部分を担当しているエンジニアとかそういう人じゃないでしょうか。

このことがいけないわけではありません。もちろん。しかし、彼、彼女が話をしに行かない人のなかで、プロジェクトとして何か問題を抱えている、あるいは問題になりそうな部分を担当している人はいないでしょうか。

ステップ4で仕事に人を割り当てた時、人材を5つのパターンに分けました。プロジェクトマネージャは、AやBのパターンに属する人と多く話をする傾向があります。しかしSPMの考え方では、計画が正しく立てられ(正しく未来が予測され)、それを正しく実行できる人(AやBの人)が担当しているジョブはその人に任せましょうと言います。実行段階でのプロジェクトマネージャの仕事は、うまくいかない部分やうまくできない人を助けることなので、パターンCやDの人がいれば(Eの人に仕事が割り当てられることはないでしょうが)、そういった人のところにこそ頻繁に足を運び、支援すべきことがないかどうかを確認しましょう。

今回の例では、CやDパターンのケースは少なく、
「小屋の大きさを決める - 母、C」
「置き場所と向きを決める - 母、C」
「シロを散歩に連れていく - 私、D」
だけでした。これらのジョブを実行する週の始めには、担当者のところに行って、準備はOKかどうか尋ねてみましょう。(犬の散歩を未経験な自分に対しては、近所の愛犬家の方にでも散歩に連れていってもらえばいいでしょう。)

ステップ6のPSI

リーダーシップスタイルのPSI評価点は10点満点で採点します。チェックポイントは大きく分けて、メンバーを信頼する姿勢、メンバーと仕事のパターン(A-Eの5段階)の把握と相手に応じたコミュニケーション、そして、コミュニケーションの確実な実行、の3つの観点です。
Step 6=6
このステップからの評価は実施状況の評価ですので、事例の場合がどうなるかは実施状況を見てみないと点数をつけられないのですが、たとえば、皆を信頼する姿勢を見せつつ、メンバーと仕事のパターンは冷静に分析してあり、やや信頼に不安のある人とのコミュニケーションが少し不足しているというような状況であれば、6点ぐらいになるでしょう。