構造化プロジェクトマネジメント(SPM) ケーススタディ - Step 8 -

今の状況を人々に伝える(Step 8)

プロジェクト発足当時からあった制約条件を乗り越え(ステップ5b、SPMでは"Baggage"と呼びます)、プロジェクトマネージャの作った計画が承認され(同じくステップ5b)、プロジェクトが始まると、ステークホルダー、特にプロジェクトのスポンサーやオーナーと呼ばれる方々は、自分たちのプロジェクトがプロジェクトマネージャによってどのように進められているかをたいへん気にされています。

それはちょうど企業経営において、株主が社長の経営実績を見るように、あるいは投資信託を買った投資家がファンドマネージャの手腕を見るような視点です。

報告する内容は、現場の日々の状況をステップ7で把握していますので、多少の予測ミスがあったとしてもゴール(ステップ1)を羅針盤に、そして、プロジェクト計画(5b)を計器にして、状況を正確に伝えればよいのです。

基本的に報告は毎週行ないます。ウィークリーレポートというわけです。月曜日に、それも早い時間のうちに出すのが一般的でかつ、ステークホルダーにとって好ましいと言えます。

今回の事例は3週間強という短いものですが、最初の山場である週末を過ぎた9月14日の月曜日に出すプロジェクト報告書[第2週目]を見てみましょう(図をクリックするとPDFファイルがダウンロードできます)。
プロジェクトレポート#2.png
見た目はあっさりしていますが、この内容は実際にはスプレッドシートに書かれていて文書作成ツール(今回はOpenOffice.orgを使用)はそれを貼付けているだけです。毎週やる作業なのでできるだけ生産性を高くする(こういうところは”手を抜く")工夫をしています。

定型的な部分(配布先メールアドレスのところまで)の次に結論をまず書きます。遅れがあるかないかです。経営者の方にはここだけを読んで安心してもらいます。

その次に概要として、起きたこと、起きなかったことを簡潔に書きます。それから、計画時に定めたマイルストーンの状況を書いて全体像を把握してもらい、変更点があればそれを記述します。

「説明」の部分には、今週の予定を列挙し、人々の関心を今週やることに向けます。
最後に、詳細な内容を把握する必要がある方のために、報告時点までの実績が記入されたガントチャートを添付します。2週目が終わった時点でのガントチャートは次のようになっています。
Gantt Chart Step  8.png
これは各タスクの状況を詳しく見たい人のためのものですので、一般的な見やすさよりも事実の提示に重きを置いています。したがって、各タスクの実績作業時間や実際に終わった日付(この例では時刻まで!)わかるようになっています。

たとえば、タスク番号6の「置き場所と向きを決める」は、当初予定の5時間より短い2時間で終了しています。また、タスク番号13番の「足りない道具を入手する」は、予定の8時間を使っていますがまだ終了していないので、残存作業時間の欄が"1h"となっています。同様にタスク番号16番の「買い出しに行く」は、所定の6時間を使っていますが残り時間が1時間あります。

この遅延が報告書冒頭の「遅延あり」の具体的タスクになるわけですが、これらのタスクの新しい終了日である9/17は後続のタスクに影響を与えないことがわかります。

毎週の報告書は、この形式を変えずに行なうことが重要です。

ステップ8のPSI

ステップ8のPSI評価点も10点満点で評価します。PSI評価が行われる最後のステップであるこのステップ8では、その週の結果が既に出ていますので比較的シンプルな観点でのチェックとなります。プロジェクトの状況報告が毎週、的確な内容で届けるべき全員に配布され、全員がそれを読んで状況を把握しているか、という観点で評価します。
Step 8=10
今回の事例では、先に見ていただいたような報告書が毎週出ており、メンバーが全員読んでいるとしましょう(最後に添付したガントチャートまで読むかどうかは各自の立場や役割によります)。このような状況であれば、報告に抜けや誤りがない限り10点としておきます。

皆さんご存知のように、実際のプロジェクトではこうはいきません。全員には読まれない報告書となっていたり、報告が具体的な遅れや余裕の数値を提示てきていなかったりしていませんか。